民法第4編 親族 第5章・第6章

第5章 後見・第1節 後見の開始

838条

後見は、次に掲げる場合に開始する。

 

① 未成年者に対して親権を行う者がいないとき、または親権を行う者が管理権を有しないとき。

 

② 後見開始の審判があったとき。

 

第5章 後見・第2節 後見の機関 第1款 後見人

839条(未成年後見人の指定)

1 未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定することができる。

ただし、管理権を有しない者は、この限りでない。

 

2 親権を行う父母の一方が管理権を有しないときは、他の一方は、前項の規定により未成年後見人の指定をすることができる。

 

840条(身成年後見人の選任)

1 前条の規定により未成年後見人となるべき者がないときは、家庭裁判所は、未成年被後見人またはその親族その他の利害関係人の請求によって、未成年後見人を選任する。未成年後見人が欠けたときも、同様とする。

 

2 未成年後見人がある場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前項に規定する者もしくは未成年後見人の請求によりまたは職権で、更に未成年後見人を選任することができる。

 

3 未成年後見人を選任するには、未成年被後見人の年齢、心身の状態ならびに財産の状況、未成年後見人となる者の職業および経歴ならびに未成年後見人との利害関係の有無(未成年後見人となる者が法人であるときは、その事業の種類および内容ならびにその法人およびその代表者と未成年被後見人との利害関係の有無)、未成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならない。

 

841条(父母による未成年後見人の選任の請求)

父母もしくは母が親権もしくは管理権を辞し、または父もしくは母について親権喪失、親権停止もしくは管理権喪失の審判があったことによって未成年後見人を選任する必要が生じたときは、その父または母は、遅滞なく未成年後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。

 

842条

削除

 

843条(成年後見人の選任)

1 家庭裁判所は、後見開始の審判をするときは、職権で、成年後見人を選任する。

 

2 成年後見人が欠けたときは、家庭裁判所は、成年被後見人もしくはその親族その他の利害関係人の請求によりまたは職権で、成年後見人を選任する。

 

3 成年後見人が選任されている場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前項に規定する者もしくは成年後見人の請求によりまたは職権で、更に成年後見人を選任することができる。

 

4 成年後見人を選任するには、成年被後見人の心身の状態ならびに生活および財産の状況、成年後見人となる者の職業および経歴ならびに成年被後見人との利害関係の有無(成年後見人となる者が法人であるときは、その事業の種類および内容ならびにその法人およびその代表者と成年被後見人との利害関係の有無)、成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならない。

 

844条(後見人の辞任)

後見人は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。

 

845条(辞任した後見人による新たな後見人の選任の請求)

後見人がその任務を辞したことによって新たに後見人を選任する必要が生じたときは、その後見人は、遅滞なく新たな後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。

 

846条(後見人の解任)

後見人に不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は、後見監督人、被後見人もしくはその親族もしくは検察官の請求によりまたは職権で、これを解任することができる。

 

847条(後見人の欠格事由)

次に掲げる者は、後見人となることができない。

 

① 未成年者

② 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人または補助人

③ 破産者

④ 被後見人に対して訴訟をし、またはした者ならびにその配偶者および直系血族

⑤ 行方の知れない者

第5章 後見・第2節 後見の機関 第2款 後見監督人

848条(未成年後見監督人の指定)

未成年後見人を指定することができる者は、遺言で、未成年後見監督人を指定することができる。

 

849条(後見監督人の選任)

家庭裁判所は、必要があると認めるときは、被後見人、その親族もしくは後見人の請求によりまたは職権で、後見監督人を選任することができる。

 

850条(後見監督人の欠格事由)

後見人の配偶者、直系血族および兄弟姉妹は、後見監督人となることができない。

 

851条(後見監督人の職務)

後見監督人の職務は、次のとおりとする。

 

① 後見人の事務を監督すること。

 

② 後見人が欠けた場合に、遅滞なくその選任を家庭裁判所に請求すること。

 

③ 急迫の事情がある場合に、必要な処分をすること。

 

④ 後見人またはその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表すること。

 

852条(委任および後見人の規定の準用)

第644条、第654条、第655条、第844条、第846条、第847条、第861条第2項および第862条の規定は後見監督人について、第840条第3項および第857条の2の規定は未成年後見監督人について、第843条第4項、第859条の2および第859条の3の規定は成年後見監督人について準用する。

第5章 後見・第3節 後見の事務

853条(財産の調査および目録の作成)

1 後見人は、遅滞なく被後見人の財産の調査に着手し、1か月以内に、その調査を終わり、かつ、その目録を作成しなければならない。

ただし、この期間は、家庭裁判所において伸長することができる。

 

2 財産の調査およびその目録の作成は、後見監督人があるときは、その立会いをもってしなければ、その効力を生じない。

 

854条(財産の目録の作成前の権限)

後見人は、財産の目録の作成を終わるまでは、急迫の必要がある行為のみをする権限を有する。

ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。

 

855条(後見人の被後見人に対する債権または債務の申出義務)

1 後見人が、被後見人に対し、債権を有し、または債務を負う場合において、後見監督人があるときは、財産の調査に着手する前に、これを後見監督人に申し出なければならない。

 

2 後見人が、被後見人に対し債権を有することを知ってこれを申し出ないときは、その債権を失う。

 

856条(被後見人が包括財産を取得した場合についての準用)

前3条の規定は、後見人が就職した後被後見人が包括財産を取得した場合について準用する。

 

857条(未成年被後見人の身上の監護に関する権利義務)

未成年後見人は、第820条から第823条までに規定する事項について、親権を行う者と同一の権利義務を有する。

ただし、親権を行う者が定めた教育の方法および居所を変更し、営業を許可し、その許可を取り消し、またはこれを制限するには、未成年後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。

 

857条の2(未成年後見人が数人ある場合の権限の行使等)

1 未成年後見人が数人あるときは、共同してその権限を行使する。

 

2 未成年後見人が数人あるときは、家庭裁判所は、職権で、その一部の者について、財産に関する権限のみを行使すべきことを定めることができる。

 

3 未成年後見人が数人あるときは、家庭裁判所は、職権で、財産に関する権限について、各未成年後見人が単独でまたは数人の未成年後見人が事務を分掌して、その権限を行使すべきことを定めることができる。

 

4 家庭裁判所は、職権で、前2項の規定による定めを取り消すことができる。

 

5 未成年後見人が数人あるときは、第三者の意思表示は、その1人に対してすれば足りる。

 

858条(成年被後見人の意思の尊重および身上の配慮)

成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護および財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態および生活の状況に配慮しなければならない。

 

859条(財産の管理および代表)

1 後見人は、被後見人の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為について被後見人を代表する。

 

2 第824条ただし書きの規定は、前項の場合について準用する。

 

859条の2(成年後見人が数人ある場合の権限の行使等)

1 成年後見人が数人あるときは、家庭裁判所は、職権で、数人の成年後見人が、共同してまたは事務を分掌して、その権限を行使すべきことを定めることができる。

 

2 家庭裁判所は、職権で、前項の規定による定めを取り消すことができる。

 

3 成年後見人が数人あるときは、第三者の意思表示は、その1人に対してすれば足りる。

 

859条の3(成年被後見人の居住用不動産の処分についての許可)

成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物またはその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除または抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。

 

860条(利益相反行為)

第826条の規定は、後見人について準用する。

ただし、後見監督人がある場合は、この限りでない。

 

860条の2(成年後見人による郵便物等の管理)

1 家庭裁判所は、成年後見人がその事務を行うに当たって必要があると認めるときは、成年後見人の請求により、信書の送達の事業を行う者に対し、期間を定めて、成年被後見人に宛てた郵便物または民間事業者による信書の送達に関する法律第2条第3項に規定する信書便物(次条において「郵便物等」という)を成年後見人に配達すべき旨を嘱託することができる。

 

2 前項に規定する嘱託の期間は、6か月を超えることができない。

 

3 家庭裁判所は、第1項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、成年被後見人、成年後見人もしくは成年後見監督人の請求によりまたは職権で、同項に規定する嘱託を取り消し、または変更することができる。

ただし、その変更の審判においては、同項の規定による審判において定められた期間を伸長することができない。

 

4 成年後見人の任務が終了したときは、家庭裁判所は、第1項に規定する嘱託を取り消さなければならない。

 

860条の3

1 成年後見人は、成年被後見人に宛てた郵便物等を受け取ったときは、これを開いて見ることができる。

 

2 成年後見人は、その受け取った前項の郵便物等で成年後見人の事務に関しないものは、速やかに成年被後見人に交付しなければならない。

 

3 成年被後見人は、成年後見人に対し、成年後見人が受け取った第1項の郵便物等(前項の規定により成年被後見人に交付されたものを除く)の閲覧を求めることができる。

 

861条(支出金額の予定および後見の事務の費用)

1 後見人は、その就職の初めにおいて、被後見人の生活、教育または療養看護および財産の管理のために毎年支出すべき金額を予定しなければならない。

 

2 後見人が後見の事務を行うために必要な費用は、被後見人の財産の中から支弁する。

 

862条(後見人の報酬)

家庭裁判所は、後見人および被後見人の資力その他の事情によって、被後見人の財産の中から、相当な報酬を後見人に与えることができる。

 

863条(後見の事務の監督)

1 後見監督人または家庭裁判所は、いつでも、後見人に対し後見の事務の報告もしくは財産の目録の提出を求め、または後見の事務もしくは被後見人の財産の状況を調査することができる。

 

2 家庭裁判所は、後見監督人、被後見人もしくはその親族その他の利害関係人の請求によりまたは職権で、被後見人の財産の管理その他後見の事務について必要な処分を命ずることができる。

 

864条(後見監督人の同意を要する行為)

後見人が、被後見人に代わって営業もしくは第13条第1項各号に掲げる行為をし、または未成年後見人がこれをすることに同意するには、後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。

ただし、同項第1号に掲げる元本の領収については、この限りでない。

 

865条

1 後見人が、前条の規定に違反してまたは同意を与えた行為は、被後見人または後見人が取り消すことができる。

 

この場合においては、第20条の規定を準用する。

 

2 前項の規定は、第121条から第126条までの規定の適用を妨げない。

 

866条(被後見人の財産等の譲受けの取消し)

1 後見人が被後見人の財産または被後見人に対する第三者の権利を譲り受けたときは、被後見人は、これを取り消すことができる。

 

この場合においては、第20条の規定を準用する。

 

2 前項の規定は、第121条から第126条までの規定の適用を妨げない。

 

867条(未成年被後見人に代わる親権の行使)

親権を行う者が管理権を有しない場合には、未成年後見人は、財産に関する権限のみを有する。

 

868条(財産に関する権限のみを有する未成年後見人)

1 未成年後見人は、未成年後見人に代わって親権を行う。

 

2 第853条から第857条までおよび第861条から前条までの規定は、前項の場合について準用する。

 

869条(委任および親権の規定の準用)

第644条および第830条の規定は、後見について準用する。

第5章 後見・第4節 後見の終了

870条(後見の計算)

後見人の任務が終了したときは、後見人またはその相続人は、2か月以内にその管理の計算(以下「後見の計算」という)をしなければならない。

ただし、この期間は、家庭裁判所において伸長することができる。

 

871条

後見の計算は、後見監督人があるときは、その立会いをもってしなければならない。

 

872条(未成年被後見人と未成年後見人等との間の契約等の取消し)

1 未成年被後見人が成年に達した後後見の計算の終了前に、その者と未成年後見人またはその相続人との間でした契約は、その者が取り消すことができる。

 

その者が未成年後見人またはその相続人に対してした単独行為も、同様とする。

 

2 第20条および第121条から第126条までの規定は、前項の場合について準用する。

 

873条(返還金に対する利息の支払い等)

1 後見人が被後見人に返還すべき金額および被後見人が後見人に返還すべき金額には、後見の計算が終了したときから、利息を付さなければならない。

 

2 後見人は、自己のために被後見人の金銭を消費したときは、その消費の時から、これに利息を付さなければならない。

 

この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。

 

873条の2(成年被後見人の死亡後の成年後見人の権限)

成年後見人は、成年被後見人が死亡した場合において、必要があるときは、成年被後見人の相続人の意思に反することが明らかなときを除き、相続人が相続財産を管理することができるに至るまで、次に掲げる行為をすることができる。

ただし、第3号に掲げる行為をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。

 

① 相続財産に属する特定の財産の保存に必要な行為

② 相続財産に属する債務(弁済期が到来しているものに限る)の弁済

③ その死体の火葬または埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為(前2号に掲げる行為を除く)

 

874条(委任の規定の準用)

第654条及び第655条の規定は、後見について準用する。

 

875条(後見に関して生じた債権の消滅時効)

1 第832条の規定は、後見人または後見監督人と被後見人との間において後見に関して生じた債権の消滅時効について準用する。

 

2 前項の消滅時効は、第872条の規定により法律行為を取り消した場合には、その取消しの時から起算する。

第6章 保佐及び補助・第1節 保佐

876条(保佐の開始)

保佐は、保佐開始の審判によって開始する。

 

876条の2(保佐人および臨時保佐人の選任等)

1 家庭裁判所は、保佐開始の審判をするときは、職権で、保佐人を選任する。

 

2 第843条第2項から第4項までおよび第844条から第847条までの規定は、保佐人について準用する。

 

3 保佐人またはその代表する者と被保佐人との利益が相反する行為については、保佐人は、臨時保佐人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。

ただし、保佐監督人がある場合は、この限りでない。

 

876条の3(保佐監督人)

1 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、被保佐人、その親族もしくは保佐人の請求によりまたは職権で、保佐監督人を選任することができる。

 

2 第644条、第654条、第655条、第843条第4項、第844条、第846条、第847条、第850条、第851条、第859条の2、第859条の3、第861条第2項および第862条の規定は、保佐監督人について準用する。

この場合において、第851条第4号中「被後見人を代表する」とあるのは、「被保佐人を代表し、または被保佐人がこれをすることに同意する」と読み替えるものとする。

 

876条の4(保佐人に代理権を付与する旨の審判)

1 家庭裁判所は、第11条本文に規定する者または保佐人もしくは保佐監督人の請求によって、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。

 

2 本人以外の者の請求によって前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。

 

3 家庭裁判所は、第1項に規定する者の請求によって、同項の審判の全部または一部を取り消すことができる。

 

876条の5(保佐の事務および保佐人の任務の終了等)

1 保佐人は、保佐の事務を行うに当たっては、被保佐人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態および生活の状況に配慮しなければならない。

 

2 第644条、第859条の2、第859条の3、第861条第2項、第862条および第863条の規定は保佐の事務について、第824条ただし書きの規定は保佐人が前条第1項の代理権を付与する旨の審判に基づき被保佐人を代表する場合について準用する。

 

3 第654条、第655条、第870条、第871条および第873条の規定は保佐人の任務が終了した場合について、第832条の規定は保佐人または保佐監督人と被保佐人との間において保佐に関して生じた債権について準用する。

第6章 保佐及び補助・第2節 補助

876条の6(補助の開始)

補助は、補助開始の審判によって開始する。

 

876条の7(補助人および臨時補助人の選任等)

1 家庭裁判所は、補助開始の審判をするときは、職権で、補助人を選任する。

 

2 第843条第2項から第4項までおよび第844条から第847条までの規定は、補助人について準用する。

 

3 補助人またはその代表する者と被補助人との利益が相反する行為については、、補助人は、臨時補助人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。

ただし、補助監督人がある場合は、この限りでない。

 

876条の8(補助監督人)

1 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、被補助人、その親族もしくは補助人の請求によりまたは職権で、補助監督人を選任することができる。

 

2 第644条、第654条、第655条、第843条第4項、第844条、第846条、第847条、第850条、第851条、第859条の2、第859条の3、第861条第2項および第862条の規定は、補助監督人について準用する。

 

この場合において、第851条第4項中「被後見人を代表する」とあるのは、「被補助人を代表し、または被補助人がこれをすることに同意する」と読み替えるものとする。

 

876条の9(補助人に代理権を付与する旨の審判)

1 家庭裁判所は、第15条第1項本文に規定する者または補助人もしくは補助監督人の請求によって、被補助人のために特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。

 

2 第876条の4第2項および第3項の規定は、前項の審判について準用する。

 

876条の10(補助の事務および補助人の任務の終了等)

1 第644条、第859条の2、第859条の3、第861条第2項、第862条、第863条および第876条の5第1項の規定は補助の事務について、第824条ただし書きの規定は補助人が前条第1項の代理権を付与する旨の審判に基づき被補助人を代表する場合について準用する。

 

2 第654条、第655条、第870条、第871条および第873条の規定は補助人の任務が終了した場合について、第832条の規定は補助人または補助監督人との間において補助に関して生じた債権について準用する。