1 系譜、祭具および墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習にしたがって祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定にしたがって祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。
同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
① 子および配偶者が相続人であるときは、子の相続分および配偶者の相続分は、各2分の1とする。
② 配偶者および直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、3分の2とし、直系尊属の相続分は、3分の1とする。
③ 配偶者および兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、4分の3とし、兄弟姉妹の相続分は、4分の1とする。
④ 子、直系尊属または兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。
1 第887条第2項または第3項の規定により相続人となる直系卑属の相続分は、その直系尊属が受けるべきであったものと同じとする。
ただし、直系卑属が数人あるときは、その各自の直系尊属が受けるべきであった部分について、前条の規定にしたがってその相続分を定める。
2 前項の規定は、第889条第2項の規定により兄弟姉妹の子が相続人となる場合について準用する。
1 被相続人は、前2条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、またはこれを定めることを第三者に委託することができる。
ただし、被相続人または第三者は、遺留分に関する規定に違反することができない。
2 被相続人が、共同相続人の中の1人もしくは数人の相続分のみを定め、またはこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前2条の規定により定める。
1 共同相続人の中に、被相続人から、遺贈を受け、または婚姻もしくは養子縁組のためもしくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前3条の規定により算定した相続分の中からその遺贈または贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2 遺贈または贈与の価額が、相続分の価額に等しく、またはこれを超えるときは、受遺者または受贈者は、その相続分を受けることができない。
3 被相続人が前2項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に違反しない範囲で、その効力を有する。
前条に規定する贈与の額は、受贈者の行為によって、その目的である財産が滅失し、またはその価格の増減があったときでも、相続開始の時においてなお原状のままであるものとみなしてこれを定める。
1 共同相続人の中に、被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
2 前項の協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法および程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。
3 寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
4 第2項の請求は、第907条第2項の規定による請求があった場合または第910条に規定する場合にすることができる。
1 共同相続人の1人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額および費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。
2 前項の権利は、1か月以内に行使しなければならない。
遺産の分割は、遺産に属する物または権利の種類および性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態および生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。
1 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。
2 遺産の分割について、共同相続人に協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。
3 前項の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部または一部について、その分割を禁ずることができる。
被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、もしくはこれを定めることを第三者に委託し、または相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。
遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。
ただし、第三者の権利を害することはできない。
相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。
各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負う。
1 各共同相続人は、その相続分に応じ、他の共同相続人が遺産の分割によって受けた債権について、その分割の時における債務者の資力を担保する。
2 弁済期に至らない債権および停止条件付きの債権については、各共同相続人は、弁済をすべき時における債務者の資力を担保する。
たんぽの責任を負う共同相続人の中に償還をする資力のない者があるときは、その償還することができない部分は、求償者および他の資力のある者が、それぞれの相続分に応じて分担する。
ただし、求償者に過失があるときは、他の共同相続人に対して分担を請求することができない。
前3条の規定は、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、適用しない。